[講師] 放射線課 柴辻 芳隆

昨年の8月におおくま病院にMRIが搬入されて、11月から稼働しています

搬入時の様子を写真でご紹介します。

MRIとは?

MRIとは「磁気共鳴画像検査」といい、強い磁場を有するトンネルの中に身体を入れて、磁石の力と電波を使って身体の内部の様子を画像化する検査です。

X線を使用しないので放射線被ばくはありません。いろいろな角度から身体の断面を画像化することができ、脳や脊髄、内臓、筋肉、関節、血管などの詳細な情報が得られます。

MRI検査時のリスク

MRI検査は、放射線による被ばくがない一方で単純エックス線撮影やCT撮影とは異なり、強力な磁気に関する事故が発生する可能性があります。MRI検査時における事故としては、磁性体等の吸引・吸着事故、火傷、インプラント類の電子情報消失や破損等の報告がされています。

吸着事故においては、患者に多大な影響を与えるだけでなく、事故後MRI機器の復旧に数日を要するため一定期間MRI検査が実施できない事態となり、状況によっては多額の復旧費用が発生することから、医療機関においては危機管理の観点からもMRI検査に係る事故の防止に取り組むことが重要です。

検査前の安全確認ポイント

禁忌

  • MRI非対応の心臓ペースメーカーを使用している方
  • 圧可変式バブルシャント(脳シャント)
  • 人工内耳を埋め込まれている方
  • 可動型義眼を装着している方
  • イレウス管挿入中の方
  • イレズミ(アートメイク)

撮影の可否を判断

  • 脳動脈瘤の手術を受け金属クリップを入れている方
  • 金属製の心臓人工弁を入れている方
  • その他の金属を体内に入れている方(目に金属粉が入っている可能性がある方など)
  • 妊娠又は妊娠の可能性がある方
  • 閉所恐怖症の方

※手術をした医療機関に体内の金属はMRI対応の金属か確認する必要がある。

MRI入室前チェックリスト(患者編)

当院では、MRI検査前に患者さんに問診票やチェックリストを見せて、金属類を持ち込まない様にチェックしています。最後に、金属探知機でチェックしています。

  • 時計
  • ピアス
  • 携帯電話
  • コンタクト
  • 磁気カード
  • 湿布
  • 入れ歯
  • カイロ
  • 補聴器
  • エレキバン
  • 貴金属
  • かつら(増毛剤)
  • ヒートテック(吸湿発熱繊維)
  • 貼付剤(ニトロ・ニュープロパッチ
  • ニコチネル・ノルスパン等)

事例の報告

この様に、チェックしていても、検査室に持ち込んでしまうことがあります。

  • 放射線技師から「金属はないか」と聞かれた際、患者は補聴器を金属と思はず、伝えなかった。
  • 放射線技師は患者のマスクを確認し、ノーズワイヤーのないマスクを渡したが、患者は交換していなかった。
  • 看護師が磁性体の有無を確認した際、患者は磁気ネックレスがMRI検査室に持ち込めないものだと認識していなかったため、伝えなかった。
  • 放射線技師と看護師が湿布やカイロの貼付の有無を確認した際、患者はカイロを貼っていることを忘れ、「何もない」と答えた。
検査室へ患者を移送するスタッフに対し入室時持ち込み禁止となっているもの

病棟で使用している車椅子・ストレッチャーは使用しない
非磁性体の車椅子・ストレッチャーを使用すること)

  • 点滴台
  • 輸液ポンプ
  • 酸素ボンベ
  • 膿ぼん
  • 聴診器
  • 事務用品
  • 体温計
  • はさみ
  • 血圧計
  • その他、金属類

吸着事故

吸着事故の報告があります。また、酸素ボンベが中に吸い込まれて、患者さんの頭部と胸を強く圧迫し、死亡するという事故も報告されています。

車椅子の吸着事故
ベット吸着事故

検査中に緊急事態が生じたとき!!

  • あわてて飛び込まない
    自分の持っている金属が凶器になる
  • 検査室の中で処置をしようとしない
    中でできることは限られている
  • すぐに検査室外へつれだす
    状態によっては救急処置室へ

まとめ

  • MRIは強力な磁力を有する
  • 磁力は見えない、感じない
  • ちょっとなら大丈夫だろうと自己判断はだめ
  • 金属に注意!注意!注意!
  • これを守れば、安全でとても役立つ検査(守らなければ、危険な事故が、必ず起こる)